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行政書士試験の合格率はなぜ低い?過去10年データから読み解く合格者の共通点

行政書士試験の合格率が「10%台」という数字を見て、ひるんでしまう人は多い。

「10人に1人しか受からないなら、自分には無理かも」「仕事しながら勉強して本当に受かるのか」。そういう不安は、数字だけを見ているうちは消えない。

ただ、この10%という数字には「構造」がある。受験資格のない試験に、どんな準備状態の人でも参加できる。その構造を理解してしまえば、この数字の見え方がかなり変わる。

この記事では、過去10年の合格率データを整理しながら、「なぜこの水準で落ち着くのか」「合格した人たちの何が違ったのか」を掘り下げる。数字に振り回されるのではなく、数字を正しく読む材料として使ってほしい。


行政書士試験の合格率 ── まず数字を正確に把握する

直近(令和7年度)の合格率は14.54%

令和7年度(2025年度)の行政書士試験の合格率は 14.54% だった(出典: 行政書士試験研究センター)。

受験者数50,163人のうち合格者は7,292人。受験者数としては、過去10年でもっとも多い年度となった。

「14%台」という数字は、低く感じるかもしれない。ただ、これが「行政書士試験の難しさの本質」を正確に表しているかというと、そうではない。その話は後ほど詳しく触れる。

過去10年の推移(2016〜2025年度)

まず、データをそのまま並べておく。

年度合格率
2016年9.95%
2017年15.72%
2018年12.70%
2019年11.48%
2020年10.72%
2021年11.18%
2022年12.13%
2023年13.98%
2024年12.90%
2025年14.54%
出典: 行政書士試験研究センター

10年の平均は概ね 12〜13% 程度。大きく外れる年はなく、10〜15%台の範囲で安定して推移している。

合格率の正しい読み方


目を引くのは2016年の9.95%と、翌2017年の15.72%だ。わずか1年で約6ポイントも上下している。これは問題の難易度が年度によって変動することを示している。合格率が絶対基準(180点以上)で決まる試験である以上、問題が難しければ合格者が減り、易しければ増える。この振れ幅を「運ゲー」と捉えるのではなく、「どの年度でも180点を取れる実力を目指す」という方針の根拠にしてほしい。

なぜ合格率はこの水準で落ち着くのか

受験資格なし = 準備不足のまま受けている人が一定数いる

行政書士試験の合格率が低い理由として真っ先に挙げられるのが、「受験資格がない」という構造だ。

年齢・学歴・職歴を問わず、誰でも受験できる。これは間口の広さとして歓迎すべき設計だが、同時に「ほぼ無勉強のまま申し込んで受けに来る層」が一定数含まれることも意味する。

申込者数と受験者数を比べると、毎年2割前後が「申し込んだけど受験しなかった」。つまり申し込んだ時点ではやる気があっても、勉強が続かなかったり仕事が忙しくなったりして本番を棄権するケースが相当数ある。

実際に受験会場に来た人の中にも、十分な準備ができていないまま「とりあえず受けてみた」層が混在している。合格率の分母には、そういう人たちが含まれている。

極端な言い方をすれば、合格率10%台という数字は「参加者全員が本気で準備した試験の難易度」を示しているわけではない。

試験範囲の広さと足切りの二重構造

もちろん、試験そのものの難度が低いとも言えない。

行政書士試験は出題範囲が広い。行政法・民法を中心に、憲法・商法・基礎法学・一般知識まで網羅する必要がある。単純な暗記だけでなく、条文の趣旨を理解したうえで事例問題に当てはめる思考力も問われる。

さらに厄介なのが「足切り」の存在だ。

足切りを含む合格基準の詳細はこちら

合格基準は①総得点300点中180点以上、②法令科目122点以上、③一般知識科目24点以上、の3条件をすべて満たす必要がある。総合点が高くても、一般知識が足切りラインを割れば不合格になる。この「どこかひとつでも崩れたら終わり」という構造が、得点管理の複雑さを生んでいる。

準備不足層が合格率の分母を押し下げていることと、試験設計そのものの難度。この二つが重なって、結果として10〜15%という数字に収まっている。

年度によって変動する理由

前述した通り、行政書士試験は絶対評価(180点以上)で合格が決まる。相対評価(上位○%を合格)ではない。

そのため、問題の難易度がそのまま合格率に反映される。

2016年(9.95%)のような低合格率の年は、記述式の採点が厳しかったり、法改正への対応問題が難化したりした年度に見られやすい。2017年(15.72%)のような高合格率の年は、問題の素直さや基礎知識で解ける問題が多かった年と見るのが一般的だ。


年齢別・属性別データから見えること

30〜40代が合格者の中心

令和7年度(2025年度)の合格者データでは、30代と40代の合格者が全体の約52%を占めている(出典: 行政書士試験研究センター)。

これは「社会人受験が主流」という現状を示している。

行政書士試験に挑む受験生の多くは、すでに仕事を持ちながら勉強している。学生のように毎日8時間を勉強に充てられる環境ではなく、通勤時間・昼休み・帰宅後の1〜2時間をやりくりしながら準備する。

それでも30〜40代が合格者の過半数を占めているという事実は、「社会人では合格できない」という思い込みを崩してくれる。

受験者数が増加している背景

受験者増加の理由は複数あるが、近年の文脈では「リスキリング(学び直し)」と「副業・独立への関心の高まり」が大きい。

令和7年度の受験者数50,163人は、過去10年で最多だった。働き方の選択肢が広がる中で、法律系の国家資格として行政書士が再評価されている流れがある。

もうひとつ見逃せないのは、受験参入のしやすさだ。受験資格なし・年1回・全国各地で受験可能という条件は、「とりあえず申し込んでみる」ハードルを下げる。受験者数の増加が必ずしも本格的な受験者の増加を意味しないという側面もある。


合格者に共通していた勉強スタイル

1回目合格者が約41%という事実

「行政書士試験は何度も受けないと受からない」というイメージがある。確かに平均受験回数は2.3回というデータも存在するが(出典: 伊藤塾2024年調査)、見落とせない数字がある。

1回目の受験で合格した割合は、合格者全体の約41% にのぼる(出典: 伊藤塾が2024年度合格者235人を対象に実施したアンケート調査)。

4割超が初受験で合格している。「複数回受けないと受からない」は、あくまで平均値の話であって、合格者の多くが1回目で決めているのが実情だ。

この数字は何を意味するか。「1回目から本気で正しいやり方で準備した人は、かなりの確率で合格している」ということだ。

準備した人の合格率は別の話


大手通信講座・予備校の受講生の合格率は、公式合格率を大きく上回ることが多い。アガルートアカデミーは受講生の合格率として高い数字を公表しており、一般合格率との差が大きいことで知られている。これは「課金したから受かる」という話ではなく、「体系的な教材と学習管理を使って準備した人は、全体の合格率とは別の次元で戦っている」ということを意味する。

「正しい方法 × 継続時間」という掛け算

合格者に共通していた勉強スタイルを一言で言えば、「正しい方法を選んで、それを継続した」に尽きる。

「正しい方法」の中身としてよく挙がるのは以下のような要素だ。

  • 行政法・民法に学習時間を集中させた(配点の高い科目を優先)
  • 過去問を繰り返すことをアウトプットの軸にした
  • 一般知識を「運に任せず」最低限の対策に絞った
  • 記述式を後回しにせず、早めから書く練習を積んだ

逆に言えば、「全科目を均等に勉強した」「インプットばかりで過去問演習が少なかった」人が複数回受験になりやすいパターンだとも言える。


合格率の数字を見るときの注意点

10%台という数字は「全体」の合格率である

「行政書士試験の合格率は10〜15%」という数字は、準備の度合いがバラバラな全受験者を分母にした数字だ。記念受験層・勉強量が足りなかった層・申込後に準備が頓挫した層を含んでいる。

それをそのまま「この試験は10人に1人しか受からない難試験だ」と読むのは、少し粗い解釈になる。

もちろん、範囲が広く足切りもある試験を軽く見るつもりはない。ただ、数字の出どころを知らずに「難しそう」と感じるのと、構造を理解した上で難しさを直視するのとでは、心理的な重さがまったく違う。

この数字を見て怯える必要はない
「行政書士試験 合格率 なぜ低い」と調べるくらいの人は、すでに「なんとなく受けてみよう」層ではない。準備を始めようとしている、あるいは始めている人だ。その段階の人がこの10%台を見て怯える必要はない。あなたが向き合うべきは「全体の合格率」ではなく、「自分がどの準備を選ぶか」という問いだ。


まとめ ── 合格率を正しく怖がれたら、次へ

行政書士試験の合格率が10〜15%台で推移するのは、試験の難度と受験者構造の両方が絡んでいる。受験資格のない試験には準備不足の層が一定数混在し、それが全体の合格率を押し下げる一因になっている。

一方で、1回目の受験で合格した割合が約41%というデータは、正しく準備した人が確実に結果を出せる試験でもあることを示している。

「合格率10%台だから難しい」ではなく、「どんな準備をするかが結果を分ける」と捉え直せると、試験勉強のスタート地点が変わる。

次のステップは、合格者がどんな学習スケジュールで1年間を設計していたかを確認することだ。

合格者がどんな学習スケジュールで動いていたかを確認する

学習スケジュールと並行して、どの参考書を使うかも早めに決めたほうがいい。主要テキスト3冊と問題集の選び方を比較したガイドはこちら

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